1973年に公開された『肉体犯罪海岸 ピラニヤの群れ』は、海辺に集まった粗暴な男女と、裕福な家庭のお嬢さんを中心に、欲望、暴力、嫉妬が暴走していく様子を描いた日活ロマンポルノ。
本編は67分と短く、成人向けの場面をふんだんに盛り込みながら、登場人物たちが破滅へ向かっていく物語も最低限まとめられています。
作品情報
- 作品名
- 肉体犯罪海岸 ピラニヤの群れ
- 公開年
- 1973年
- 上映時間
- 67分
- 監督
- 西村昭五郎
- 脚本
- 中野顕彰
- キャスト
- 梢ひとみ、潤ますみ、絵沢萠子、大山節子
- ジャンル
- パニック、ホラー、成人映画
注意
この記事には、映画の結末を含むネタバレがあります。また、作品内の性的暴力や成人向け表現について触れています。
オープニングの順番から時代を感じる
オープニングでは、プロデューサーから制作陣、俳優、そして最後に監督という順番で名前が紹介されます。これが当時の一般的な並びだったのかはわかりませんが、現在の映画とは違う時代を感じさせます。
現在の作品では、主要な俳優の名前が早い段階で表示されることも多くあります。誰を目的に作品を見るのかという、観客の関心や映画の売り出し方の違いも表れているように思います。
海上のボートから始まる物語
物語は、海の真ん中に浮かぶボートの上で、中年男性と女性がよろしくやっている場面から始まります。
海を舞台にした映画なので、てっきりこの二人が最初の犠牲者になるのかと思いました。しかし、二人は何事もなく陸へ戻ってきます。
ところが、そこで若く粗暴な男女にボートを貸せと脅され、力ずくで奪われるという予想外の展開になります。男女の絡みから暴力へ一気に移ることで、観客を強引に物語へ引き込む構成になっています。
疾走するボートからは女性の笑い声が響きます。しかし、ベッドの上でやればよさそうなことを、わざわざ海上のボートでやる必要があるのかとも思ってしまいます。
ただし、実際に海上を走るボートを撮影しているため、かなりの手間がかかっていることは想像できます。内容はともかく、撮影スタッフの苦労がしのばれる場面です。
「ピラニヤの群れ」と呼ばれる五人組
頭の悪そうな男四人と女一人。どうやら、この五人組がタイトルにある「ピラニヤの群れ」らしいのです。
彼らの悪党ぶりを示すためとはいえ、性的暴力まで観客向けの刺激として扱う、どうしようもなく救いのない展開が続きます。
そこへ、金持ちの家のお嬢さんが通りかかります。ここまでの流れなら、次の犠牲者になる人物かと思うところです。
しかし、彼女は五人組を鋭い目で見つめています。無理やり巻き込まれるというよりも、自分から危険な場所へ飛び込んでいきそうな雰囲気を漂わせています。
危険な集団を見つめるお嬢さん
お嬢さんは、踊り狂う五人組をドアの隙間からじっと見つめています。そして、彼女は自分から彼らと関係を持とうとします。
救いのない人物設定ではありますが、お嬢さん役は表情の変化が少なく、何を考えているのかが伝わりにくいところがあります。
そのためか、やがてピラニヤ側の女性も絡みに加わり、カメラはそちらへ向けられていきます。
気の進まない結婚への反抗
場面は、お嬢さんの家の食卓へ切り替わります。そこで彼女が、気の進まない結婚を控えていることが語られます。
先ほどの行動は、家族や結婚に対する反抗心の表れだったのでしょう。危険な相手に自分から近づいた理由も、一応はここで説明されます。
その後、お嬢さんの婚約者が一人になると、今度はお嬢さんの母親が彼に迫り始めます。
この作品では、男女が同じ場所にいれば、とりあえず関係を持たせるのが基本なのかと思ってしまいます。ただ、登場人物たちの視線を追っていくと、それぞれに狙っている相手がいるらしいことは伝わってきます。
屋敷への侵入と急激な展開
やがて屋敷で停電が起き、ピラニヤの一団が侵入します。
彼らは金を奪うわけでもなく、屋敷にいる女性たちを襲います。朝まで好き勝手に振る舞ったうえ、翌日には電線を切断し、今度は昼間から屋敷へ侵入して同じことを繰り返します。
そこへ、巡回中だった刑事が踏み込み、彼らは一度捕まりかけます。しかし、屋敷から奪ったライフルを使い、その場にいた人々を次々と殺していきます。
それまでの成人向け映画らしい展開から、突然、登場人物が次々と退場していく犯罪映画のような展開へ切り替わります。
一人の男をめぐる嫉妬
混乱のなか、ピラニヤのリーダー格の男とお嬢さんは、二人だけで屋敷を抜け出します。
そして、やはりヨットの上でやることをやっています。すると、それまで険しかったお嬢さんの表情がやわらぎ、まるで別人のような顔になります。
一方、置き去りにされたピラニヤ側の女性は険しい表情を浮かべ、ボートで二人を追いかけます。
彼女はヨットへ執拗にボートをぶつけ、ついにはお嬢さんが海へ投げ出されます。水面には血が浮かびます。
最後は、女が男へ浴びせる罵声が海上に響きわたり、そのまま幕を閉じます。
『肉体犯罪海岸 ピラニヤの群れ』を観た感想
さすがは日活ロマンポルノというべきか、性的な場面をふんだんに盛り込みながらも、最低限の物語を入れることは忘れていません。
ただし、本編は約67分しかありません。その短い時間のなかへ成人向けの場面をこれでもかと詰め込んでいるため、物語はほとんど説明する間もなく、とんとん拍子で進んでいきます。
あらすじだけをまとめれば、十分ほどで説明できてしまう内容です。
それでも、一人の男をめぐる嫉妬によって、最終的にはほとんどの登場人物が退場してしまうという展開は、なかなかに過激でした。
題名にある「ピラニヤの群れ」は、粗暴な五人組の危険性を表しているのでしょう。しかし、最後に最も強く描かれるのは、集団の暴力そのものではなく、一人の男を奪われた女性の嫉妬です。
成人向けの場面、暴力、犯罪、嫉妬を67分へ強引に押し込んだ、勢いだけは十分に感じられる作品でした。